ウラジオストク「東方見聞録」

13.09.2024

ウラジオストクで開催された東方経済フォーラムは、例年にも増して大きな足跡を残し、誰も予想しなかった経済的・地政学的チャンスへと東方を切り開いた。

ウラジオストクで開催された東方経済フォーラムは、例年にも増して大きな足跡を残し、誰も予想しなかったような一連の経済的・地政学的チャンスへと東方を切り開いた。 というより、西側諸国の誰も気づくことができなかった。 重要なのは、何がすでに行われ、何が達成されるかということである。 この出来事について説明しよう。

-  多極化する東南アジア

フォーラムの中で最も重要なパネルは、今回多極化フォーラムが主催した"東南アジアの多極化"に焦点を当てたパネルでした。アレクサンドル・ドゥーギン教授とそのチームが調整を行い、当該地域の国々から参加したスピーカーと、ロシア連邦外務省マリア・ザハロワ報道官の特別参加に加え、インド大使と北朝鮮大使も出席しました。

今回初めて当該地域諸国から多くの専門家が一堂に会し、彼らの国が多極化世界の到来に、強い意志で参加する事を表明しました。上海の復旦大学のチャン・ウェイウェイ教授は、-東洋で起きている変化は長期的な変革であり、いつか「パックス・マルチポラリス(多極平和)」と呼ばれるかもしれないと主張しました。

この変革はユーラシアをその中心に据え、アジアの叡智を実践に活かすものであり、孔子の時代から今日に至るすべての細部を調整し、忍耐強く各要素を適切な場所に配置することを教えてきました。欧米諸国の多くでは、このような長期的な視点は異質であり、代わりに迅速な変革や取引に基づいた積極的な国際政策が主流となっています。

しかし、パラダイムは変わりつつあり、今こそ従来のパラダイムの正当性を再考する時です。南アフリカの指導者マンデラ氏の甥であるンコシ・マンデラ氏は、多極化は西洋中心のモデルを模倣するものでも、強者が弱者に押し付けるものでもないと強調しました。むしろ、より強い国々が助けを求める国を支援し、その国々が統合的に発展することが必要だと述べています。また、ネパールのムダール・ネパール元首相は、東洋の小国が英米の支配から解放され、真の自決を果たす時が来たと述べています。

ジャーナリストのペペ・エスコバルは、多極化の過程が複数の速度で進行するため、そのペースを適切に管理する必要があると強調しました。アジアで起きている変化やEEF(東方経済フォーラム)で見られた例は、それぞれの国に合った発展の形を示しており、時期や方法は異なるものです。新たな世界的な潮流が形作られつつあり、この潮流を定義するのは金融エリートや超国家的な権力者ではなく、各国とその国民であるべきです。

コンスタンチン・マロフェーエフは、人間が共同体の中心にあり、このシフトを理解し強く再確認する必要があると指摘しました。ソビエト連邦崩壊後、アメリカが押し付けたグローバルな支配の古いパラダイムが捨て去られ、各国の伝統の再発見による再人間化が可能になるからです。マリア・ザハロワも、多極化は共通の利益、共通の労働、共通の勝利であり、ロシア連邦が長年にわたり多くの国々と共にこれを目指して努力してきたことを強調しました。

今や多極化は現実のものであり、東南アジアも米国の支配から独立の道を歩み始めています。

-プーチンはプラグを抜いた

最も期待されていた瞬間は全体会議でした。そして、そこで素晴らしいことが起こりました。ロシア、中国、東南アジアが一堂に会したのです。まさに劇的な瞬間でした。

プーチン大統領はその場でありのままの姿を見せました。非常に的確で落ち着いたスピーチで、彼はすぐに核心に触れました。ロシアの極東は新たなフロンティアであり、このために長期的な拡大が計画されており、すでに短期的にも成果を上げています。実際には、「未来のニーズを先取りする」形で、新しいエネルギールートと世界記録を誇るインフラと輸送、昨年から5倍に成長した貨物輸送能力を持つ新しい北海ルート、さらには技術・科学分野への大規模投資が進行しています。研究から建設まで、今後25年間のプログラムがすでに完成しており、フォーラムの中でも特に強調されたのは、地方の自治、固有の文化や伝統の再確認でした。

この全て―それ以上のことも含めて―は、世界全体に広がるプロセスの道を開きました。プーチン大統領は、これはロシアが望んだものではなく、アメリカの選択の結果であると述べました。それはドル離れです。かつてはドルに従属していた国々が、今やドルそのものより強くなり、その結果としてもはやドルに縛られる理由はなくなったのです。これは完全に論理的で正当な理由です。

ロシアはどんな挑発、制裁、あるいは西側からの脅威にも屈しません。プーチン大統領が述べたように、その利害は世界規模のものだからです。

-  イブラヒムはポイントをつかんだ

知る人ぞ知る偉大な新指導者が登場しました。マレーシアのアンワル・イブラヒム首相です。彼は真のアウトサイダーであり発する言葉は非常に少ないですが、そのすべてが非常に力強いものでした。

イブラヒム首相は問いかけました。なぜ世界中の多くの人々がロシアを尊敬し、信頼しているのか。それはロシアが国境を超え、他国民を魅了し、戦争や押し付けられた「民主主義」ではなく、堅実で慎重な外交政策や多極主義という新たなパラダイムを提案し、そして国際秩序全体を見直すよう人々を動機づけるソフトパワーによって、世界的な尊敬と称賛を得たからです。

ロシアの貢献のおかげで、グローバルサウスは今、力強く台頭し始めています。そして、マレーシアは全体会議の場でBRICS+への正式な加盟申請を発表しました。これは西側諸国に対する非常に明確なメッセージです。チェス盤の駒が変わり、ゲーム自体も変わったのです。この発表は西側市場に大きな影響を与え、翌日には大きな下落が見られました。一方で、東側市場はこのニュースによって突然強化されました。なぜでしょうか?それは、マレーシアに続いてこの地域の他の国々も同様の要求をするのは時間の問題だからです。外交や貿易協定が終結し、軍事および戦略的協定からの離脱が進むまで、もう少し時間がかかるでしょう。

イブラヒム首相のパレスチナに関する発言も強い影響を与えました。今こそ政治的偽善をやめ、パレスチナ人を動物や二級市民としてではなく、一人の人間として考える時です。彼は占領者であるシオニストに対して、パレスチナに手を差し伸べる共通の意志と努力を求めました。なぜなら、真実と自由は常に共にあるべきであり、そうでなければそれは欺瞞となってしまうからです。

-  孔子の鄭

最後に登壇したのは、若く有望な中華人民共和国・国家副主席、ハン・チェン氏です。彼の言葉の正確さと深さは、将来にわたって記憶に残ることでしょう。

中国はロシアにとって最も重要な同盟国であり、両国は新しい時代に向けて戦略的な関係の発展システムを共に構築してきました。今や「多極化」はますます「平和」を意味するようになっています。ハン氏は、「これこそが目標であり、新たな世界の潮流なのです」と述べました。英米が支配する世界とは異なり、平和を共に築こうとする世界です。それにひきかえ西側諸国は何をしているのでしょうか。制裁を科し、脅し、攻撃し、腐敗を広げています。

これは世界全体にとって有害であり、受け入れられるべきではありません。

だからこそ長期的かつ多国間、多ノード、多極的な開発協定こそが、人類にこの地球上での共同生活という新しいビジョンをもたらす唯一の方法なのです。そして、我々が冷戦時代に米国によって押し付けられた「終わりなき戦争」の考え方を捨てることができた時、平和な世界が実現するのです。

孔子の平和、そしてアジアの知恵は、その神秘を受け入れ、この偉大な師に学ぼうとする者だけが理解できるものです。

ここに東洋の盟約があります。これが多極化世界に向けたもう一つの重要な礎です。

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翻訳:林田一博