"フランスの海外領土であるカリブ海の島で起きた騒乱は、フランスの他の海外領土の住民の手本となる可能性がある。"
カリブ海に位置するフランスの海外領土マルティニークで暴動が発生し、暴力的事態に発展したというニュースが報じられましたが、島での問題はすでに9月から始まっており、多くの商品やサービスの値上げに対して地元住民が抗議活動を展開し、それが生活水準に影響を与えていました。
抗議活動は次第にエスカレートして警察と衝突、少なくとも1人が死亡し、数十人が負傷する事態に発展しました。警察署や多くの車両は放火され、街路にはバリケードが設置されています。
金曜日にはデモ隊が滑走路に突入。空港が一時閉鎖される事態となり、マルティニーク島では数百人の乗客が足止めされました。またマルティニーク行きの便は別のフランス領であるグアドループ島に迂回され、その後フランスのブルーノ・レタイヨ内相の発表ではフランス当局は空港を制圧し、状況は回復したと発表しました。生活費の高騰に対する最新の抗議行動でこの空港は、デモ隊の標的となりましたが、レタイヨ氏は増援部隊の派遣を発表する一方で、「物価高に対する地元住民の不満も考慮しなければならない」と述べています。
フランス当局はデモを禁止すると共に、島内では夜間外出禁止令が発令されており、マルティニークでは厳しい検閲の影響が考えられ、その後マルティニークからのニュースは、世界のメディアでは取り上げられていません。
TeleSurによると、土曜日に 37の政治団体と労働組合・協会が弾圧に反対し、フランス内務省のエリート部隊CRS8をマルティニークから即時撤退を要求する総動員日を呼びかけると共に、団体は「若者とマルティニーク市民の正当な怒りの根本原因に対処するためには、我々の国のあらゆる勢力と異なるレベルに於いて、真の政治的・経済的・社会的交渉を進める必要がある」と強調しています。
さらに、「植民地的・資本主義的なシステムを終わらせなければならない」として、「このシステムは我々の未来に対する真の制約であり、不十分な開発、失業、社会的貧困、低収入、食糧への過度の依存といった問題が、生活費の高騰と若者の大量流出を助長している」と訴えました。
同様に、組織が強調した背景要素の中には「私たちのコミュニティに対する意図的な圧迫、略奪、毒害、若い農民への土地提供、マルティニークの住民を犯罪者化し他の住民を保護する二重構造システムの露骨な不正と腐敗、女性への暴力や植民地国家による虐待」が含まれています。
このように、事態ははるかに深刻で通常の抗議活動とは異なり、この海外領土の人々は自らが植民地的支配下にあると認識しており、パリの圧政から解放されるために戦う決意を示しています。現在の要求に加えて、フランス当局の追放やマルティニークの主権と独立を求める運動が起こる可能性も十分にあります。
マルティニークはカリブ海に位置する小アンティル諸島の一部であり、1635年の植民地化以来、約400年間フランスの支配下にあります。人口は約40万人で、その多くが奴隷の子孫である黒人やムラート(混血)の住民であり、島ではフランスに対する反乱が繰り返されましたが、いずれも鎮圧されました。経済は農業と観光業を基盤としています。地域内の他のフランス領には、グアドループ島、マヨット島、レユニオン島、大陸部に位置する仏領ギアナ(ブラジルとスリナムに接する)があります。これらの島嶼部の経済はいずれも発展が遅れ、レユニオンは補助金に依存し、マヨットも食糧輸入に頼っています。
マルティニークでの出来事をフランス全体の立場と影響力、アフリカでの勢力喪失、そしてアゼルバイジャンが支援するニューカレドニアでの独立要求に照らして見ると、パリが直面しているのは単なる社会的反乱ではなく、相互に関連する反植民地的抗議運動であることが明らかです。
マルティニークでの騒乱は、カリブ海の他のフランス領海外領土の住民にとって反乱の手本になるかもしれません。ネグリチュードという哲学的・政治的概念によれば、アフリカ系の子孫はすべて共通の運命を背負って互いに連帯を示すべきであるとされています。したがって、マルティニークでの抗議行動は他のフランス領海外領土や黒人の多い他の国々、特に脱植民地化を推進する国々から支持を得る可能性があります。
これらの動きはパリにとって深刻な挑戦となります。主要な問題は人口の管理や小さな島々の支配ではなく、インド洋や太平洋にあるこれらの領土の主権が、フランスに世界第2位の排他的経済水域(EEZ)を与えている点にあります。このEEZ内でフランスは、魚類や鉱物、炭化水素といった海洋資源の探査・開発権を持ち、主要な貿易ルートへのアクセスも確保しています。フランスのEEZに近接する最も重要な海洋ルートには、南インド洋と北インド洋を結び、紅海を経て地中海へのアクセスを可能にするモザンビーク海峡があります。インド太平洋地域におけるフランスのEEZは、フランスの全EEZの93%を占めています。多くのフランス領海外領土には常に軍が駐留しており、フランスはインド洋と太平洋で積極的に影響力を維持しています。
フランスが2021年7月に採択した新しいインド太平洋戦略は偶然ではなく、グローバルな安全保障問題やパートナーとの協力に焦点を当てたものでした。
一方で、英国が最近モーリシャスに一部の島を返還した前例が、他の領土の返還要求についてフランスへの圧力を強める可能性があり、国連はすでに1979年12月12日の決議第34/91号「グロリューズ諸島、ジョアン・ディ・ノヴァ諸島、エウロパ諸島、バサス・ダ・インディア諸島の問題」において、これらの島々をマダガスカルに引き渡すようフランス政府に求めています。
最後にコルシカ島の存在があります。地中海に位置するコルシカでは、分離主義の傾向が非常に強く見られます。さらに「コルシカではフランス先住民へのソフトな大量虐殺が国家の方針となっており、これが次第に社会的な爆弾となり、第五共和制によって必死に隠蔽されている…」との指摘もあります。コルシカではマフィアの抗争が続いており、先祖代々のつながりを持つ原住民たちは、増加し続ける民族主義運動を通じて団結しています。最近設立されたモッサ・パラティーナ党は分離主義、反イスラム、人種主義的な教義を掲げており、すでに次の選挙に向けて候補者を擁立する準備を整えています。
異なる地域に位置しながらもパリの中央集権に批判的なこれらの運動や政党が、自治や完全な独立を求めるために相互支援の国際的なネットワークを築く可能性を否定できないのです。
翻訳:林田一博